木台秋草小鳥蒔絵櫛
¥ 11,000
日本の装身具、櫛です。
月型の木製台に漆で蒔絵が施されています。木地の木目が透ける軽やかな肌合いに、精緻な筆致で尾花、萩、牡丹(寒牡丹でしょうか)のような秋草と小鳥の姿が描かれています。木地に溶け込むような色合いの蒔絵が控えめで日本的な美しさだと思います。
櫛(くし)、笄(こうがい)、簪(かんざし)などの髪飾りが普及するのは江戸中期の享保年間でありますが、この頃は飾り櫛を指さない女性はいないというくらいに一般的なものでした。現在の櫛は髪を梳かすものでありますが、昔は髪を梳かした後に髪に指しておくアクセサリー的な意味合いのほうが大きかったのです。現在の女性がピアスを付け替えるように、装いに合わせて、季節に合わせて、様々な意匠の櫛が作られたのも当然だと思います。私の祖母は大正生まれですが、さほど長くない髪を低い位置で小さな団子にまとめて、コーム状の櫛を常に指していました。鏡のないところでも髪のほつれを撫でつけてさっと髪に指しておく一連の行為はなんとも女性的で、子供心にも印象的でした。すでに失われた美しい日本女性の仕草だなと思います。
サイズ W 9.9cm
H 3.4cm
D 0.4cm
素材 木
年代 明治頃